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世界の生ハム一挙紹介!産地や種類、ワインとの相性をソムリエが解説

世界の生ハム一挙紹介!産地や種類、ワインとの相性をソムリエが解説

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生ハムとオリーブ


1915年創業、世界24か国からワインを輸入しているワインインポーターMottox モトックスが運営するECサイト「UNCORK アンコルク」です。

当店では、ソムリエ資格を持つスタッフが試食をして実際にワインと相性の良かった選りすぐりの生ハム、サラミの食べきりサイズから詰め合わせセットまで豊富に取り扱っています。



あなたは生ハムをよく召し上がりますか?

「スーパーで売っている国産メーカーの生ハムと、レストランで食べる生ハムって見かけも味も違うけど、一体何が違うんだろう?」
「生ハムって、生って付いているけど、生の豚肉って食べていいのかな?」

そんな疑問をもったことはありませんか?


実は一言で「生ハム」と言っても、製法、原材料の違い、そして使用する部位の違いでタイプが異なり、味と風味が全く違うのです。

そして生ハムはロースハムやボンレスハムに比べて、より生のお肉に近い見かけをしていますが、決して生肉をそのまま使ったものではなく豚肉を塩漬けにしてから乾燥と熟成という工程を経て生まれるものなのです。


このコラムでは、生ハムの生産工程から、聞き馴染みのあるプロシュートや ハモン・セラーノ、そして最近よく見るジャンボン・セックをはじめとする世界各国で造られている様々な生ハムを詳しく解説しています。

ぜひぜひご一読いただき、生ハムの種類や違いのポイントをおさえて、ワインと楽しんでくださいね。

また、「どれを選んでいいかわからない!」という方には、ソムリエが厳選したおすすめのものを詰め合わせたお得なセットもご用意しております。ぜひお試しください。
<目次>
生ハムとはなにか

生ハムの種類
▷ その1「製法の違い」
▷ その2「原材料の豚の種類の違い」
▷ その3「部位の違い」

生ハムの製法 生ハムができるまで

世界3大生ハムとは
▷ イタリア代表「プロシュート・ディ・パルマ」
▷ スペイン代表「ハモン・セラーノ」
▷ 中国代表「金華ハム」

イタリアの生ハムの主な種類・特徴
▷ 「プロシュート・サンダニエレ」
▷ 「クラテッロ・ディ・ジィベッロ」
イタリアの食肉加工品の輸入の現状

スペインの生ハムの主な種類・特徴
▷ ハモンイベリコの3つのグレード

フランスの生ハムの主な種類・特徴
▷ 「ジャンボン・ド・バイヨンヌ」

▷ 「プロシュート」と「ジャンボン・セック」、「ハモン・セラーノ」の違い

ソムリエ直伝「生ハムとワインの楽しみ方」
▷ ワインの合わせ方その1:「国を合わせる」
▷ ワインの合わせ方その2:「ハムの味わいのタイプでワインを選ぶ」

生ハムの一人前って何グラム?

生ハムにある白い斑点の正体は?

生ハム、食肉加工品の保存方法と美味しい食べ方

まとめ「産地ごとに味わいが違う生ハムを楽しもう!」



生ハムとは なにか

生ハムが並ぶ肉屋


英語で「ハム」という言葉のもともとの意味は、「豚の後ろ脚(モモ肉)」です。 スペイン語ではハモン、フランス語ではジャンボン、といいます。

そこから今では、主に豚のもも肉を塩漬けし、必要に応じて乾燥や燻煙、加熱などをした加工肉をまとめて「ハム」と呼んでいます。 生ハムとはそのハムの中でも「一度も加熱をせず」長期熟成したハムのことを指します。

ちなみに「加熱タイプのハム」とは、塩漬けした塊肉を紐などで成形し、蒸気や茹でたりするこで加熱加工したもので、日本でよく食べられている「ロースハム」「ボンレスハム」といったハムがこれにあたります。


生ハムの種類

生ハムはその製法、原材料の豚の種類の違い、そして豚のどの部位を使うかによって区別できます。

▷ その1「製法の違い」

ハモンセラーノをカットする手


生ハムは、
■塩漬けした後に「乾燥・熟成」させるイタリア・スペインタイプと、
■塩漬けした後に「燻煙(冷燻:16~22度の低温で燻製)してから乾燥熟成」させるドイツタイプ
に大きく分かれます。

燻製をかけずに乾燥熟成させたタイプのものを、燻製したものと区別するために「ドライハム」と呼ぶこともあります。

▷ その2「原材料の豚の種類の違い」

生ハムの加工工場


豚は野生のイノシシから家畜化されたもので、目的に合わせて改良が繰り返されてきました。

やわらかくキメの細かい肉質が合うので生ハムの原材料になるのはほとんどが「白豚」ですが、最近ではスペインのイベリコ豚やフランスのバスク豚、などその土地特有の文化、気候風土に合わせて変化をとげてきた「地豚」が脚光を浴びています。

ただ、こういった地豚とよばれる「在来種」や、かごしま黒豚などの「純血種」の豚は、飼育時間が改良品種の白豚に比べ長くかかります。

イベリコ豚にいたっては、出荷までに2年以上かかるもの(一般的な白豚は生後160~180日ほどで出荷)もあり、手間やコストがかかるため、これらを原材料とする生ハムの生産量もそう多くはありません。


▷ その3「部位の違い」

生ハムの原木がのった木製の台


豚のももを骨が付いたまま整形し、生ハムにしたものは「骨付き生ハム」になり、この太もも1本のことを「原木」と呼びます。よくスペインのバールにいくと、この原木が専用の台に設置され、オーダーが入る度にナイフでスライスしてサーブされていますね。 

それとは違い「豚のもも肉」や「肩肉」、「ロース肉」などを整形し、塩漬けしたものを低温で乾燥燻煙させて出来上がった生ハムを「ラックスハム」と呼び、これはドイツが起源の生ハムです。

「ラックス」とはドイツ語で「鮭」を意味していて、断面が鮭の身のように光沢のある鮮やかな紅色をしていることからこの名前が付きました。

日本国内でつくられる生ハムの多くは、このラックスハムのタイプに区分され、短期間で出来上がるので味わいがフレッシュで若々しいのが特徴です。


生ハムの製法 生ハムができるまで

イタリア・スペインで主流の「自然乾燥」でつくる生ハムの製造工程を見てみましょう。


1:トリミング・整形
脂肪の厚みや色、肉の状態をチェックし、生ハムに向く豚もも肉だけを選別します。

余分な皮、脂肪部分を取り除き形を整え、(皮を残すか残さないか、どの様な形にするか、は地域によって異なります。)マッサージを行い、肉の内部に残った血を押し出します。


2:塩漬け
塩の味を付け、塩の効果によって余分な水分を抜き、細菌の繁殖を防ぐために豚もも肉に塩漬けします。塩の種類、粒の大きさなどによって生ハムの塩気が変わります。


3:表面の洗浄
塩漬け期間が終わったら塩を洗い流します。


4:乾燥
肉を、湿度・温度をコントロールできる部屋で吊るして乾燥させます。
この期間に、塩がさらに肉の奥まで浸透するので芯の部分の水分も抜けていき、表面は乾燥して固くなります。


5:乾燥熟成
吊るした肉を、風通しのよいところに移して乾燥熟成させます。季節や環境によっては、外気を取り入れて熟成させる地域もあります。


6:グリーシング
イタリアではラードと小麦粉または米粉、胡椒を合わせて練り合わせたものを、肉の断面や皮のない部分に塗り、これ以上肉の内部の水分を失わないようにします。スペインではマンテカ油という、オリーブオイルとラードを混ぜたものを塗ります。

これをすることで生ハムの柔らかさが保たれます。


7:熟成
光の少ない、また空気のあまり流れない部屋に肉を移し、肉に「食用に適した白カビ」をつけて熟成させます。このカビが肉の水分を吸収し、肉のタンパク質を分解→旨味成分に変えて美味しい生ハムになるのです。


8: 官能検査
完成した生ハムは各地域にある品質検査機関の検査官によって厳しくチェックされます。細かく決められルールを守ったうえで、最後の官能検査に合格したものに、各地域の認定印が与えられ出荷されていきます。


世界3大生ハムとは

生ハムでも特に歴史があり、美味で知られている「世界三大ハム」を紹介しましょう。


▷ イタリア代表「プロシュート・ディ・パルマ」

プロシュート・ディ・パルマ


イタリア語で豚もも肉のハムのことを「プロシュート(プロシュット)」と呼びますので、これは直訳すると「パルマ産生ハム」のこと。

イタリア各地で生ハムは作られていますが、その中でもイタリア北部エミリア・ロマーニャ州パルマ近郊で生産される生ハムの中で「パルマハム品質協会」の厳しい全基準をクリアし、パルマ侯爵の王冠マークの焼き印が押されたものだけが「プロシュート・ディ・パルマ」と名乗ることが許されています。

朝晩の寒暖差、乾燥した空気、そしてティレニア海からアペニン山脈を越えてくる冷たい風が生み出す最高の熟成環境が独特の風味を生ハムに与え、香りが高く上品な風味で、栗のような香りがすると言われています。


▷ スペイン代表「ハモン・セラーノ」

ハモン・セラーノ


「ハモン」とはハム、特に熟成したもののこと、そして「セラーノ」は「山の」という意味があり、その名の通りスペインの山岳地域でよく作られていることからこの名前が付けられたといわれています。

塩漬けにした白豚の後ろ足を、山岳地帯の山村で長期間気温の低い乾いた空気の中で最低9か月以上吊るして乾燥・熟成してつくられます。同じくスペインの生ハム「ハモン・イベリコ」は黒豚を原料にするのに比べ、こちらは「白豚」からできるハムです。

比較的低脂肪のあっさりとした味わいで、イタリアのプロシュートと比べるとは歯応えがあり塩気はよりマイルドなものが多いです。

ハモン・セラーノの中で唯一EUから原産地呼称制度(D.O.P.)に認定されている「ハモン・デ・テルエル」という最上級の生ハムもあります。
スペイン産ハモン・セラーノ スライス 100g
世界三大生ハム「スペイン産ハモン・セラーノ」の食べやすいスライスパック。
ハモン・デ・テルエルD.O. 24か月 (スライス) 65g
最高級スぺイン産生ハムの食べやすいスライスパック。

▷ 中国代表「金華ハム」

金華ハム


中国では「金華火腿」と呼ばれる、中国東部・浙江省の金華地域で作られているハムです。 金華ハムの製造の歴史はとても古く、既に唐の時代(618~907年)には金華地域でが豚の塩漬けが作られていたという記録が残っています。

成熟が早く肉質もよいことで知られる優良豚「金華豚」に、穀物などは与えず白菜や茶殻を発酵させたものを与えて育て、気温が10度以下となる冬に仕込みを開始します。2ヶ月ほど、塩に埋め込んで塩漬けしたあと、天日で二週間乾燥させ、さらぶ風通しのよい場所で数か月から1年ほど乾燥させて熟成させます。

ヨーロッパ系のハムはぶらさげて乾燥熟成させますが、金華ハムは棚にならべて、ときどき上下に繰り返して、満遍なく乾燥させる独自の製法でつくられます。

しっかりした身と塩が強い味が特徴で、イタリアのプロシュートやスペインのハモンのようにそのまま生では食べることはせず、料理の味出しとして調理して食べます。中国料理の味のベースになる一番ダシの上湯(ショントン)作りの素材として欠かせない材料です。


イタリアの生ハムの主な種類・特徴

3大ハム以外にも世界各地ではいろいろなハムが作られています。まずはイタリアの生ハムを見てみましょう。


イタリアで「豚のもも肉のハムの総称」のことをプロシュート、またはプロシュット(Prosciutto)と呼んでいます。日本で「プロシュート」というと燻製しない生ハムのことを指すことが多いですが、イタリアでは、非加熱のものはプロシュート・クルード(prosciutto crudo)、加熱したものはプロシュート・コット(prosciutto cotto)と呼んで区別しています。

イタリアの生ハムの製法はとてもシンプルで、原材料も豚もも肉と塩のみです。ほとんどの場合、皮つきで仕込まれ、最熟成期間は最長で36カ月です。

乾燥させているうちに余分な水分と油分が抜け、まろやかな風味が生まれます。その繊細な風味を楽しむため、イタリアでは手切りではなく、機械を使って薄く薄くスライスし、とろけるような食感と舌触りを楽しみながら食べることが多いです。


ではプロシュート・クルードの有名な銘柄をご紹介します。


▷ プロシュート・サンダニエレ

プロシュート・サンダニエーレ


イタリア北東部のフリウリ地方サン・ダニエーレでつくられる、世界三大生ハムのプロシュート・ディ・パルマと双璧をなすイタリア最高品質の生ハムです。

プロシュート・ディ・パルマと同じ種の豚でつくられますが、パルマは膝下をカットするのに対し、サン・ダニエーレはカットせずつま先まで用いるのでその形状で違いがすぐにわかります。

アルプスからの乾燥して冷たい空気と、アドリア海の湿気を含んだ海からの風が交じり合う独特の気候が生み出す最高の環境下、プロシュート・ディ・パルマに比べてマイルドな塩味、独特の甘い風味をもった生ハムが出来上がります。


▷ クラテッロ・ディ・ジィベッロ

クラテッロ・ディ・ジィベッロ


パルマ地方を流れるイタリア最長の川「ポー」流域でつくられる生ハムです。他のイタリアの生ハムと違い、クラテッロは豚ももの一番やわらかいお尻周辺の部分だけを使います。そのため生産量がとても少なく、価格も高めです。

お肉を塩漬けしてから香辛料を加えた赤ワインに漬け込み、その後豚の膀胱に詰めて乾燥熟成させます。モデナ近くのジベッロ村でつくられるクラテッロはD.O.Pに認定されています。


イタリアの食肉加工品の輸入の現状

イタリアのピエモンテ州の野生イノシシで、アフリカ豚熱(ASF)の発生が確認されたことをうけ、現在イタリアからの豚肉等の一時輸入停止措置がとられています。

イタリアからの豚肉全般、プロシュート パルマ,サンダニエーレ生ハム,コッパ,パンチェッタ,サラミ等を含む豚肉加工品全般の輸入が全て停止されており、おおよそ停止期間は数年間になると言われています。(今のところ未定)

イタリア産の生ハムやサラミが安心して食べれる日が一日でも早く来ることを願いつつ、イタリア以外の国の生ハムを知るよい機会にもなるのでは、と思い、イタリア以外の国の生ハムの魅力もご紹介していきます。


スペインの生ハムの主な種類・特徴

スペインもイタリアと同じく、燻製をせずに自然乾燥のみでつくる生ハムが主流です。イタリアと違い、一部地域を除いて皮をはがして仕込みます。また食べ方も、イタリアと違って専用ナイフで手切りすることが多く、噛み締めて熟成した風味を味わう、というところにスペインの特徴があります。
手切りカットされたハモンが載ったお皿


スペインの生ハムやサラミなどは「ハモン・セラーノ」を代表とする白豚で作られたもの、そして「ハモン・イベリコ」をはじめとするスペインの地豚「イベリコ豚」で作られたものとに区別されます。

イベリコ豚はイベリア半島の西南部で飼育される黒豚で、飼育に2年以上の月日がかかることから高価です。しかし脂身の甘さや肉質の味のよさから非常に人気があります。

ここで押さえておきたいポイントは「イベリコ豚全てがどんぐり豚ではない」ことです。 イベリコ豚、というと放牧されどんぐりを食べて育っているというイメージがありますが、それはイベリコ豚の中でも一部で、実はイベリコ豚には飼育の仕方で3つのグレードに分類されます。


▷ ハモンイベリコの3つのグレード

放牧されているイベリコ豚


1:ハモン・イベリコ・ディ・ベジョーダ

放牧中にドングリ、草、その他の自然の産物のみを食べて育ったイベリコ豚で、これが最上級と言われます。 どんぐりを食べて育ったイベリコ豚の脂肪はオレイン酸を60%近くも含んでいて脂肪の融点が低いため、口の中ですぐに溶け出し風味、香りが素早く広がります。

2:ハモン・イベリコ・ディ・セボ・デ・カンポ

放牧中にどんぐりなどの自然に得られる餌だけでなく、体重増加を補うため穀物飼料も与えられた豚は「セボ・デ・カンポ」 と呼ばれます。

3:ハモン・イベリコ・デ・セボ

穀物飼料を与えられ小屋で飼育されたイベリコ豚。



このように書いてしまうと3のハモン・イベリコ・デ・セボがよくないのでは、と捉えられてしまいそうですが、まずイベリコ豚自体の飼育がとても手間と時間がかかること、そしてイベリコ豚の肉質は他とちがった独特の味わいがもともとあること、さらに、スペイン国内の豚の全頭数の中でイベリコ種はとても割合が低いこと、をぜひ忘れずにいていただきたいと思います。
スペイン産ハモンイベリコ・セボ(スライス) 50g
高級豚「イベリコ豚」で作った生ハムの食べやすいスライスパック。

フランスの生ハムの主な種類・特徴

フランス語でハムは「ジャンボン Jambon」といいます。製造によって3つに区分され、塩漬け後ブイヨンで加熱したジャンボン・キュイ Jambon cuit 、イタリアやスペインと同じように自然乾燥で熟成させた非加熱のジャンボン・セック Jambon sec、そして燻煙したジャンボン・フュメ Jambon fumeがあります。


▷ 「ジャンボン・ド・バイヨンヌ」

ジャンボン・ド・バイヨンヌ


ジャンボン・セックの分類のフランスを代表する生ハムで「バイヨンヌ・ハム」とも呼ばれます。ジャンボン・ド・バイヨンヌのために飼育された「ポーィ・ド・ヌストゥ」という豚のもも肉を岩塩で塩漬けした後、9か月~1年間熟成させて作られます。

塩味がきいた赤身が特徴で、噛むごとに旨味と繊細な熟成香が楽しめる生ハムです。

▷ 「プロシュート」と「ジャンボン・セック」、「ハモン・セラーノ」の違い



先述した”イタリアからの豚肉、および豚肉加工品等の一時輸入停止措置”によって、現在日本でイタリア産のプロシュートを食べることが非常に困難になっています。

ハムの輸入会社も各社、イタリア産プロシュートに代わる商品の販売に力をいれており、今まではメジャーではなかったオーストリーやハンガリーなどの生ハムを見る機会も増えてきました。

では、イタリア産プロシュートに比べて味わいや風味はどう違うのでしょうか?よく目にするフランス産ジャンボン・セックとスペイン産ハモン・セラーノとイタリア産プロシュートを比較してみました。



まずプロシュートは、豚肉を塩漬けしてから風味をつけるために熟成させます。熟成期間が短めで、豚肉本来の甘味と塩味がバランスよく調和した、やや柔らかい食感と風味豊かな味わいが特徴の生ハムです。

そして、ジャンボンセック。豚肉を塩漬けしてから天日干しにして作られますが、この塩漬けの期間が長いのでプロシュートより塩味が強めの味わいが特徴です。よく動かすことで脂肪分が少な目の豚もも肉を使ったあっさりとした味わいで、生ハムの中では柔らかい食感が一番イタリア産プロシュートに近いと言われています。

一方、ハモン・セラーノですが、熟成期間が長く噛み締めるごとに豚肉本来の風味が楽しめる生ハムです。やや塩味が控えめで、熟成によるより複雑で風味豊か味わいが特徴です。 濃い旨味を感じたい方におすすめの生ハムと言えます。

全てに当てはまるとは言えませんが、一般的にスペインは熟成温度帯が高めなので水分が抜けてややしっかりとした質感になる傾向があり、一方フランスやイタリアは熟成温度帯が低めなのでスペインに比べるとハムに水分がより残り、しっとりとした食感になる傾向にあります。

こののように、それぞれの生ハムに独自の製法と風味がありますので、ぜひお好みに応じて選んでみて下さい。


ソムリエ直伝「生ハムとワインの楽しみ方」

生ハムはもちろん料理の具材として食されることも多いですが、そのままや、ちょっとアレンジをするだけで美味しいのでワインを楽しむ時のおつまみとして最高です。基本的に白・ロゼ・赤・スパークリンワイン・・・とどんなタイプのワインとも楽しめますが、ソムリエおすすめの「ワインとの合わせ方」を2つご紹介します。


▷ ワインの合わせ方その1:「国を合わせる」

赤ワインと生ハムとワイン畑


美味しい生ハムができる国は、同じくワインも美味しい国。ということで、まずは「生まれた国」をあわせる組み合わせはいかかですか?

薄くスライスしたイタリアのプロシュートには、イタリアの微発泡赤ワイン「ランブルスコ」がおすすめ。強すぎない柔らかな優しい味わいと溶けるような食感の生ハムが口の中で溶けあいます。ラズベリーのようなフレッシュな果実味と酸味が生ハムの脂身をさっぱりと感じさせてくれ、食べ飽きることがありません。

厚みがあり噛み締めて肉の旨味を楽しむスペインのハモンには、生ハムの味わいに負けないスペイン産の赤ワインを。比較的あっさり目のハモン・セラーノにはジューシーな果実味が特徴のブドウ品種「ガルナッチャ」を使ったフレッシュな赤ワイン、旨味が濃いハモン・イベリコにはスペインを代表する品種「テンプラニーリョ」を使い樽熟成をさせたフルボディの赤ワインをおすすめします。



▷ ワインの合わせ方その2:「ハムの味わいのタイプでワインを選ぶ」

スペインの「ハモン・セラーノ」は淡泊であっさり目、「ハモン・イベリコ」は脂にコクがあり旨味が濃い、などのように、同じ国の生ハムでも原材料の豚によって味わいが違います。



難しい!!じゃあ、一体なにを合わせたらいいの??という時の1つの指標になるのが「生ハムの熟成期間」です。一般的に「熟成の短い若い生ハム」は「あっさりと淡泊でフレッシュさの味わい」のものが多いので、ワインも「フレッシュで軽やかなもの」を合わせるとよいでしょう。白ワイン、ロゼワイン、そしてライトボディの赤ワインなどピュアな味わいのものがおすすめです。
生ハムと白ワイン


反対に「熟成の長い生ハム」は「コクがあり複雑な味わい」になりますので、ワインも「複雑さのあるもの」が合います。樽で熟成させて香りや味わいが複雑な赤ワインがおすすめです。イタリアの長期熟成に向くぶどう「ネッビオーロ」種やスペインの「テンプラニーリョ」種でできたフルボディのワインなどがよいでしょう。

生ハムと赤ワイン


迷った時は「スパークリングワイン」を選びましょう!スパークリングワインにある泡の刺激がハムの脂身をより甘く感じさせてくれます。また、シュワっとした泡立ちがハムを食べた後の口の中をクリーンにさっぱりさせてくれるので、また次が食べたくなる・・・という「美味しいループ」を生み出してくれます。


生ハムの一人前って何グラム?

カッティングボードにのった生ハムとチーズ


レストランやバルで生ハムを提供する場合、一人分を約20~30gとしているところが多いように思います。なので、ご自宅で食後やアペリティフなどに軽く摘まむ程度であれば20gくらい、と考えるとよいでしょう。

100gのパックであれば約4~5人前、また4~5回分ほど入っている、と考えていただければよいと思います。

おつまみだけじゃなく、料理にも使いたい!たくさん食べたい!という方は200gのパックなどもありますので、用途に合わせてお選び下さい。


生ハムにある白い斑点の正体は?

チロシンが出た生ハム


パックされた生ハムを見ると、たまに白い斑点がある時があります。「開封していないのにカビ?」と思われる方もいらっしゃいますが、これはカビではなく「チロシン」と呼ばれる白い結晶でタンパク質中のアミノ酸が結晶化したものです。

熟成がよく進んだ生ハムほど、その発生頻度が高く、長期熟成チーズいも見られる現象です。チロシンは生ハムの品質に影響を与えるものではなく、そのまま食しても全く問題ありません。


生ハム、食肉加工品の保存方法と美味しい食べ方

ラップをもつ手


1パック食べきれなかった!と生ハムが残ってしまった場合は、必ず「ラップに包んで」保管してください。空気に触れることで生ハムが酸化したり、乾燥が進んでしまいます。

また、ラップに包んだうえでジップロックなどの保存袋にいれ空気を抜いてからチャックをしめるとより良いです。その状態で冷蔵庫に入れておけば一週間ほど持ちますが、一度開封した生ハムは1週間を目安に食べきってください。
チーズや生ハムの載った皿


また、生ハムは脂の部分に熟成で生み出されたナッツ系の旨味が詰まっています。その脂が溶け出した頃が一番おいしいので、冷蔵保存された生ハム、そしてサラミなどの食肉加工品を食べる時は食べる30分~1時間ほど前には冷蔵庫から出し、常温にならしておいてください。

そうすることで、ハムの脂身の部分が柔らかくとろっとろになり、口の中に入れたときにとろける食感を楽しむことができます。ハムの脂身が少し溶けてキラキラ輝いてきたら食べごろのサインです。


まとめ「産地ごとに味わいが違う生ハムを楽しもう!」

ワインと生ハムとオリーブオイル


世界各国の生ハムについてお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか?

その国、そしてその地域ごとに食文化や気候に合わせて、長い歴史の中で独特の生ハムをつくりあげてきているので、「生ハムとはこういうもの」と簡単に説明することができません。 その複雑さをぜひ「楽しい」「面白い」と感じていただけたら、と思います。違う国の生ハムをお皿に並べて食べ比べしてみる、というのもおすすめです。

イタリアの生ハムを楽しむことができない2023年現在、各輸入業者さんはイタリアの生ハムの代わりになるもの、といつも以上に違う国の生ハムに力を入れて販売されていますので、ぜひこの機会に今まで食べたことのなかった生ハムに親しんでみてはいかがでしょうか?

きっと新しい美味しい味、そしてワインと合わせたときの至福の時が楽しめるはずです。



参考文献
■高橋矩彦 発行/ハム&ソーセージ大全/(株)スタジオ タック クリエイティブ/2013
ISBN:978-4-88393-608-3
■早嶋茂 発行/「生ハム」「サラミ」大全/旭屋出版編集部/2018
ISBN:978-4-7511-1353-0
■生ハム教本/一般社団法人日本生ハム協会/2019



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PROFILE

S.Tsujimura

UNCORKスタッフ。夫と2人の子供と4人暮らし。お酒は弱いが、お酒&美味しいものを人と囲む空間が大好き。家で食べるごはんが大好きで、平日はノンアルコールワイン、週末にワインを一緒に楽しんでいます。J.S.Aソムリエ。